少子高齢化が進む中で、資産を持つ高齢者層をターゲットとした詐欺が後を絶ちません。
少し前にマイナンバー制度にまつわるマッチポンプ詐欺についてご紹介しましたが、今回は架空の老人ホーム入居権をめぐる詐欺についてです。
10月30日、消費者庁は「株式会社ミサワケアホーム」なる架空の老人ホーム運営企業が行っていた詐欺手口を公表し、注意喚起を促す発表を行いました。
この「株式会社ミサワケアホーム」を騙る犯人グループは、今年の6月から9月にかけて全国で暗躍。
消費者庁が把握しているだけでも28件もの相談が寄せられており、実際に数百万円を騙し取られる事例も発生しているのこと。
専門家らは最近頻発している高齢者をターゲットとした「劇場型詐欺」の一例だとして、警戒を呼び掛けています。
劇場型詐欺という言葉に聞き覚えのない方も多いかと思います。
劇場型詐欺とは、犯人グループが複数の業者を騙り、入れ替わり立ち代わり電話を掛けるタイプの詐欺手口で、複数の業者がさも演劇のように勧誘や脅迫を行ってくるため「劇場型」と呼ばれるようになりました。
時間差で複数の業者が連絡をしてくるため、実態の把握がしづらく、よく分からないまま金銭を騙し取られてしまうケースも多い、悪質な詐欺手口です。
今回の事例では、まず「株式会社ミサワケアホーム」を名乗る事業者から「くつろぎの里」なる老人ホームのパンフレットや会員申込み用紙が届くところが詐欺がスタートします。
その後、別の業者から「くつろぎの里に入居したがっている人がいる。権利を譲ってほしい」「名義を貸してもらえれば手続きはこちらでやる。入居者については、あなたの親戚ということにしてほしい」といった依頼の電話が掛かり、これに応じてしまうと、後日ミサワケアホームから「第三者を親戚と偽って申し込みをした。不正取引に該当するので違約金を支払ってもらう」といった内容の脅迫電話が掛かってきます。
「入居希望者のために名義貸しを~」という高齢者の善意に付け込んだ手口は、先日取り上げたマイナンバーのマッチポンプ詐欺の構造と非常によく似通っており、今後も類似の手口による詐欺が出現する可能性は高いと思われます。
「困っている人を助けると思って、名前だけでも~、マイナンバーだけでも~」と言われるとついつい了承してしまいそうになりますが、それでは詐欺業者の思うつぼ。第三者から何らかの情報・金銭を要求するような不審な電話がきたら、一人で安易に判断せずに、お近くの消費生活センターや警察の該当窓口などに相談するようにしましょう。
全ての詐欺対策に対して言えることですが、「自分は大丈夫」という思い込みは危険です。近年の詐欺手口は非常に巧妙化しており、こちらの冷静な判断力を的確に奪い去っていきます。
繰り返しになりますが、少しでも怪しいと感じたら一旦電話をおいて落ち着くための時間を確保してください。そして可能ならば第三者の意見を仰ぐようにしてください。
詐欺被害の大部分は、一呼吸おいて落ち着いて対処さえすれば回避できるものがほとんどです。慌てて相手の要求を呑んでしまうことのなきよう、注意をしましょう。
当サイトでも引き続き、詐欺手口の周知徹底と被害防止に向けた取り組みを続けていきます!